発音と口腔について
言葉を操ることはコミュニケーションや文化形成の元になってます。
文字も言語があればこそ発明されてきたものです。
この発声機能は基本的に人間しかできません。
それは大脳の発達と共に、ヒトの発音器である口腔、舌、喉の独特の形態によってもたらされています。
そして、この二つの要素は直立二足歩行と軟食の生活が背景となり作り出されてきました。
直立による頭部の重量バランスの改善のため前後径を短縮するのと、軟食による顎自体の縮小があいまって顎顔面は脳の下に回りこみ、脳が顎顔面の上から覆いかぶさるように変化してきました。
しかし内臓である舌は、その体積を確保するために、前後に圧縮された分だけ上下に厚みを持つようになり、全体として丸い形状となりました。
つまり舌に相当する喉の部分(咽頭)が縦方向に伸び、鼻、口と気管の入り口(喉頭)の間に空間が出来、口腔の空間と共に声洞と呼ばれる大きなスペースが出来てきました。
しかもこのスペースは、丸くなったことにより縦横無尽に動くことが出来る舌が変化することで声洞は様々な形に変化させることが出来ます。
楽器のリードに相当する声帯から出たシンプルな音は、形状の変化するラッパの中を通ることによって、いろいろな音階の音色を作るのです。
一方、体の天辺に位置付けられた脳は直立により物理的な制約をほとんど受けず、かつ肥大し重量化しても体の重心上に位置するので安定して体と共に運動することが可能なため、どんどん発達し、複雑なコミュニケーションが可能な知能を持つようになり、その究極の機能として発声を編み出してきたのです。
舌の複雑な動きを操り、試行錯誤で言葉を造ります。
舌の形を、発達した中枢より運動出力し、体内認識や聴覚で知覚入力し、体の中でのネットワーク形成を繰り返すことによってますます知能は向上していきました。
そして他者とのふれあいで、言葉の種類を互いにすり合わせて共有し、言語が発明されてきたわけです。
丁度、幼児が繰り返し繰り返し試行錯誤の発音をすることによって発育していく姿に見ることが出来ます。
ちなみに言語が出来たのは7万5千年前で、西洋人と東洋人の分離もその当たりであり、人種の顎顔面の形態差がそれぞれの文化圏の言語形成の背景のようです。
顔面形状の差は環境の気候と食性の差によると言われています。
舌は発声の重要な役割をしてるのですが、声洞のもう一側の壁である上あごの形態や、口腔内の容積も適切でなければなりません。
上顎を覆ってしまう義歯はもちろんのこと、かぶせ物でも形によっては舌の動きや上下の歯の近接具合を阻害してしまいます。
歯科治療は発音機能に大きな影響を与えてしまうのです。
咬み合わせの高さも、これまた重要です。
まさに口腔容積を左右する問題ですし、歯を使用した発音(歯音)との関係性からも重要です。
もとより咀嚼という一方の機能の質を左右する要素でもあるため、多面的な検討を経ての設定が重要になってきています。
このための具体的な注意点は以下のようになります。
2) 出来るだけ声洞の障害にならない特有のスペース、位置に義歯の装置を設定する
3) 装置のスペースを出来るだけ小さくするように薄くする
4) 上記の要件を満たしながら必要な出来るだけの強度を与える